森博嗣『Φは壊れたね』

Φは壊れたね (講談社ノベルス)

Φは壊れたね (講談社ノベルス)

 2004年9月購入。1年弱の放置。マンションの1室で発見された死体は宙吊りにされていた。現場は密室で一部始終はビデオで録画されていた。そのタイトルは『Φは壊れたね』。D2大学院生となった西之園萌絵が山吹早月、加部谷恵美、海月及介らと事件の謎に挑む。

 事件解決に当たってビデオ『Φは壊れたね』を観察するシーンは『すべてがFになる』のエレベータの動きを観察する場面を想起させる。事件の手掛かりを探る手法として「推理」でなく「観察」を主眼としている。想像をめぐらし論理を展開させるのでなく、あくまで眼前のデータを重視するという態度にいかにも「理系」らしさを感じる。