鮎川哲也『戌神はなにを見たか』

 2001年12月購入。4年近く放置orz 東京で見つかった刺殺死体に残された物証は外国人の顔が刻まれた浮彫と「賃」もしくは「貸」に似た字が焼き印された瓦煎餅。これらから導き出された容疑者には鉄壁のアリバイがあった。

 他の鮎川作品にも言えることだが、容疑者を特定するまでの過程と幾多のミスリード、そしてそこから先のアリバイ崩しに至るまでが丁寧に書かれている。背表紙の紹介文には「アリバイ崩し、遠隔殺人トリック、改綴文などを盛り込んだ、重量級推理小説!」とあるがまさに盛り沢山の重量級だ。文中で登場人物の一人が、「倒叙物で一級品ともいうものは、犯人が完璧と思われる計画をたてて実行に踏み切るが、それがほんの些細なミスを見逃したために崩壊してしまうというパターンです」と言い、さらに「犯人の計算外の、天変地異とでもいった出来事によってばれてしまうという内容」を二級品としている。この分類は至極真っ当だが後の展開を考えるとひどくシニカルなものでもある。