栗本薫『グイン・サーガ101 北の豹、南の鷹』

ついに当初の予定を超えた101巻に突入した「グイン・サーガ」。タイトルはそれぞれグインとアルゴスの黒太子スカールのことだが、いよいよ両者が邂逅を果たす。100巻以上付き合ってきただけあって感慨深いものがあるなあ。そして嗚呼イシュトヴァーン……

今巻で興味深かったのが、ヴァレリウスの扱い。大切な人を亡くし、もはや失うものなどないという点で同じ境遇のスカールが自由に生きているのに対し、彼は今なお周囲のしがらみに縛られている。さらにもう一つが妻子も王族としての地位も捨てて自由に生きるマリウスとの対比。スカールと同じ境遇でもスカールほど徹しきれず、彼よりもしがらみがあるはずのマリウスがより自由に生きている。きっと誰もが生き方として憧れるのはスカールやマリウスのそれであるが、ヴァレリウスのようにしか出来ないであろう。自由に生きることは難しい。