泡坂妻夫『ヨギ ガンジーの妖術』

ヨギ ガンジーの妖術 (新潮文庫)

ヨギ ガンジーの妖術 (新潮文庫)

先月のオフ会の際、原宿のブクオフでゲットした本。探してた本なので発見したときはウヒョーとか叫びそうになった。
ドイツ人とミクロネシア人と大阪人の混血にしてヨガの達人ヨギ ガンジーが遭遇する妖術・心霊術がらみの事件。それぞれ<心霊術><遠隔殺人術><念力術><予言術><枯木術><読心術><分身術>と副題がつけられた七つの短編を収録。
作者は奇術師ということもあって見せ方がうまい。奇術では観客にタネを見破られぬようにするだけでなく、マジックをいかに面白く見せるか演出を考える必要がある。ミステリでも同様に読者を意識した上で、純粋に小説として面白くなるような構成を作らねばならない。単純にトリックを考え(トリックが単純というわけではなく、それ自体も面白い)、それをただ小説風に肉付けするのではなく、純粋に読み物として楽しめるような仕上がり。特に謎解きの部分はウマい。ミステリはその特色ゆえにトリックとその解明を重視するために物語としての自然さを損なってしまうケースが多々あるが、このシリーズではそのへんが実に自然に物語と一体化している。
現在入手困難なこの短編、重版再開を強く望む。