近藤史恵『スタバトマーテル』

スタバトマーテル (中公文庫)

スタバトマーテル (中公文庫)

2004年6月購入。約1年の放置。

大学の副手のりり子はすばらしい声の持ち主だが、本番では過度の緊張感から歌えなくなってしまう声楽家という過去を持つ。
そんなりり子は母親なしでは作品を描けない版画家大地と付き合い始める。
その直後からりり子の周囲で巻き起こる危険……

近藤史恵の描く女性像は、心の中で常に悲痛な叫びを上げている。そしてたすけを求めるかのように男にすがる。そうやって男女関係を築いていく。彼女の描く女性像は決してさっぱりとはしていないので好きになれない人も多いのではないか。私などは近藤史恵的世界観、大好きであるが。
ミステリ的にもミスリードがきっちりと仕掛けられていた。また動機に関する部分では、被害者が今後加害者になりうる部分を突いている。そのへんを描いたラストは怖さも感じさせる。