米澤穂信『春期限定いちごタルト事件』

春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)

春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)

米澤穂信は某オフ会で薦められた作家さん。前から気になってていたのだが、ようやく読んでみた。購入は去年の12月orz まあ、タイトルに相応しい季節に読めたんでよいのでは、はい。


何かと口を出したがる小鳩君と執念深い性格の小佐内さん。二人はそんな自分の欠点を気に病み、目立たずに小市民として生きていこうとする。そんな二人の前に起きる事件の数々……


「羊の着ぐるみ」 なくなった女生徒のポシェット。いったい誰が、隠したのか? 高校入学したての小鳩君は友人の頼みでポシェット探しを手伝うことになる。

「For your eyes only」 美術部OBの画家が残した一件稚拙な絵。だが、それは世界で一番高尚な絵だという。画家の真意とは?

「おいしいココアの作り方」 友人宅で出されたホットココア。そこに入ったミルク温めるには別に鍋が必要。だが、キッチンのシンクは使われた形跡はない。どうやって温かいココアを作ったのか?

「はらふくるるわざ」 テスト中、ロッカーに置かれた栄養ドリンクのビンが落ちた。いったいどうやってビンを落としたのか。そして何のために……

「狐狼の心」 以前に盗まれた小佐内さんの自転車。その犯人をついに突き止めた。小佐内さんは仕返しを目論むが、小鳩君にはそれが心配。小鳩君は小佐内さんを助けられるか。そして、自転車泥棒の背後に隠れていた事件とは?


創元お得意の日常系ミステリ。作中で見せる小鳩君の探偵役に対する拒否反応はこれまでのミステリに登場する名探偵がぶつかった壁でもある。それに対して苦悩しつつも立ち向かう(法月綸太郎金田一耕介)か、そんなものを歯牙にもかけず突き進む(メルカトル鮎や矢吹駆)か探偵のタイプは大別していずれかのタイプに分けられると思うがこの小説の主人公はどちらでもなく、小市民になることで逃げようとする。ところが、逃げることを選んでおきながら好奇心に負けて推理をしてしまう。このあたりの信念のなさはいかにも今の若者を描いた西尾維新佐藤友哉に通ずるものを感じる。

とりあえず、続編を楽しみに待つ。ついでに、他作品も買ってみる。