大倉崇裕『白戸修の事件簿』

白戸修の事件簿 (双葉文庫)

白戸修の事件簿 (双葉文庫)

 2005年6月購入。5年1ヶ月の放置。典型的な巻き込まれ型ミステリである。大学生の白戸修は殺人事件の容疑者になった友人の潔白を証明するために、事件の鍵を握っているらしいスリを探すべく奔走する「ツール&ストール」。友人の代わりに看板貼りのバイトをすることになったのだが、警官に追われたりライバルの同業者とトラブったりする「サインペインター」。お金を下ろしに行った先の銀行で強盗に遭遇する「セイフティゾーン」。成り行きで探偵のアシスタントをすることになり、ストーカーに怯える女性をガードすることになる「トラブルシューター」。買い物先のデパートで万引き犯に間違われ、その挙句万引きパトロールの手伝いをすることになる「ショップリフター」。
 友情だったりちょっとした恩義に報いるためだったり、乗りかかった船だったりと原因は様々だが白戸はズブズブとトラブルにはまっていく。その過程で見られるスリや万引きの手口の多彩さは読みどころの一つである。それのみならず、これらのトラブルは二転三転し意外な結末を見せるのでミステリ的な面白みも十分に備えている。各短編によって白戸自身が真相を暴く探偵役だったり、ただ単に事件に振り回されて終わったりと立ち位置が安定しないため、過度にキャラクターに肩入れする読み方をすると肩透かしに終わってしまう話があるものの、それは些細な欠点でしかない。総体的に良質な短編集といえる。