道尾秀介『向日葵の咲かない夏』

向日葵の咲かない夏

向日葵の咲かない夏

 夏休み直前の終業式の日、ミチオは同級生でいじめられっこだったS君の首吊り死体を発見する。先生に報告に行き、現場に戻ると死体は消え失せていた。それどころか混乱するミチオの前にクモに生まれ変わったS君が姿を現し告げる――僕は殺された。死体を見つけ出して欲しい、と。ミチオと妹のミカはS君の死体探しを始めることとなる。
 暗く陰鬱な雰囲気で子供のつらさ、そして残酷さを描いており個人的に非常にツボにはまる作品だった。ただしその暗さに救いを求めるかのようなラストは逆に蛇足に思える。妹のミカが聡明すぎる気がしたがそれも真相を知って納得できるものになる。
 帯にて不条理ミステリとうたっているが、そのへんはよくわからなかった。これって不条理か?

 ところで、伊坂幸太郎(1973生まれ)、舞城王太郎(1973生まれ)、そしてこの道尾秀介(1975年生まれ)といった1970年代中頃に生まれた作家には作品をつぐむ上である傾向が見て取れるような気がする。というのは「ミステリ*1」を「ミステリ」としてジャンル内作品を作り上げるのでなく、そのジャンルを利用して物語を構築していくといった手法をとっているようにみえるのだ。上の世代、特に新本格第一世代などはあくまで「ミステリ」の手法にのっとり「ミステリ」を書くようなジャンルに対するこだわりが感じられるのとは対照的だ。この世代は今後注目していきたいと思う。

*1:あるいはホラーなど他ジャンル